TRD Rally Cup by JBL 2019 Rd5 どんぐりハチ公ラリー 2019 レポート



 10月19〜20日、秋田県大館市 を舞台として第39回どんぐりハチ公ラリーが行われた。2019年JAF東日本ラリー選手権 第10戦 、2019年JMRC東北ラリーシリーズ 第4戦、そして第14回 JMRC オールスターラリーフェスティバル in 東北 として開催されたこのラリーに、TRD Rally Cup by JBL Rd.5をクラス編入しての開催となる。本戦の行程は総走行距離約130km/SS距離約38.4kmの、グラベルをメインとしつつも随所に舗装路面が顔を覗かせるミックスサーフィス。レキ日となる19日は朝から雨が降り続き、路面が沈み込むほどの軟質な状態となる。レキとはいえ多くのハイパワー4WDが走行した後は路面が掘られ、深い轍が作られてしまう。この轍をどのようにクリアするか、各クルーは頭を悩ませる事となった。

 今回使用されるコースは、山を縦断する一本の林道を前半と後半に分けて設定される。セクション1は2.196kmの新沢上りSSから6.872kmの中山下りSSへのルートとなり、これをリピートし2周する。セクション2は逆方面からのアプローチで中山上りSSから新沢下りSSとなる。こちらも2周走行し、計8本のSSとなる。新沢SSはほぼ全域グラベルとなるが、柔らかい土質の路面の上に砂利が敷き詰められているため掘られやすい。轍を避けてマシンを横に向けたまま轍にタイヤを引っ掛けてしまうと挙動を大きく奪われるためオン・ザ・レールでタイヤを轍に沿って走行するのがセオリーとも言えるが、タイヤが半分ほど隠れてしまう深い轍では、マシンのアンダー部を路面に激しく打ち付けながらの走行となってしまう。中山SSは半分ほどが舗装路面となるが、コンクリート路面のためグリップレベルが低い上に雨の影響で非常にスリッパリーな状態となる。そのうえ、斜面途中に多く設置されたグレーチング箇所が段差となるため、ラリースピードではそれらがジャンプ台となっていく。アクセル全開のまま着地すると、駆動系に大きなダメージをもたらす危険性がある。そんな神経を使うステージが7km近く続くとあり、非常に難易度の高いステージとなった。

TRD Rally Cup by JBL 2019 Rd5 どんぐりハチ公ラリー エントリーリスト

CUP-2







 86/BRZ限定のCUP-2クラスには4台の86が出走。シリーズチャンピオンの行方がまだ分からないCUP-2は、本戦には不出場となる奥本・谷﨑組が31ポイントで一歩リード。それを追うのが、四国てっぺんで悲願の初優勝を果たした吉原・佐野組。現状で25ポイント獲得しているが、有効ラウンドとなる3戦にすでに出場しているため、本戦で優勝してもトータル29ポイントで一歩届かない。しかし、TRD Rally Cup by JBLの独自ルールであるSSポイント(SSトップタイムを記録すると1ポイント加算)により、3つのSSポイントを獲得した上で優勝を決めれば、晴れてシリーズチャンピオンを獲得することができる。3位で追うカルロス・藪本組においても同様で、優勝した上で5つのSSポイントを獲得すれば大逆転でシリーズチャンピオンを獲得できるとあり、両選手ともラリー前から静かに闘志を燃やす。しかし、初参戦となる強豪選手が二人の戦いに割って入ることとなる。地元・秋田からの参戦となる工藤・阿部組だが、工藤は自らモータースポーツショップを営む傍ら、東北ラリーシリーズにも4WDマシンで参戦する。05~06年には東北Bチャンプを獲得した実績もあり、このクルーがどのように勝負に絡むかが見ものとなる。また、初戦のネコステラリーに参戦しターマックで光る速さを見せた塚本・寺田組も初戦以来の参戦となった。
 ラリー当日。前日降り続いた雨は止んだが、路面はぬかるむマッドなコンディション。そんな中で迎えたSS1、気合でマシンを前に押し出したのは吉原・佐野組だった。「シリーズタイトルを獲るにはSSポイントが必須。路面は難しいですが、最初から全力で行きます」と語った通り、順調な滑り出しで早々にSSポイントを獲得した。続く中山下りSSにおいても好調な走りを維持する吉原。後続のカルロス・薮本組に18秒差をつけての圧倒的なスピードを見せつけた。このSSも吉原・佐野組がSSポイントを獲得したことにより、残されたシリーズタイトルの条件はクラス優勝のみとなった。
 このまま吉原の独走が続くかのように見えたが、潮目が変わり始めたのはSS4の中山下りSSだった。ここまで冷静に走行を重ねてきた地元の工藤・阿部組が自身の1本目のアタックを1分以上縮め、さらには吉原のタイムをも20秒近く上回るトップタイムでフィニッシュすることとなる。この衝撃のアタックで終えたセクション1だったが、吉原は後続へのマージンを30秒以上残しての折返しということもあり、依然有利な状況は続く。しかし、後半さらに路面が荒れることを考慮すると、地の利がある工藤の逆転もありえる状況となる。
 逆走となるセクション2。ロングの上りとなるSS5だが、ここでも工藤・阿部組が後続に10秒以上の差をつける走りを見せ、SS4の走りがマグレではないことを証明する。一方これによりマージンが20秒と減った吉原であったが、冷静に状況を分析し、落ち着いた走りで次のSS6を取り返す。
 そして迎えた運命のSS7。全開走行状態でのジャンピングスポットが続くこのSSにおいて、なんと吉原・佐野組のマシンのドライブシャフトが破損してしまう。なんとか走行することはできるが、片輪にしか駆動が伝わらない状況となり、全開アタックとは程遠いスピードのフィニッシュとなった。これにより吉原組の自力優勝はほぼ絶たれることとなる。時を同じくしてカルロス・薮本組のマシンもドライブシャフトを破損。全力で1年戦ってきたマシンにとって、この秋田の道は険しく非情なものとなった。
 残す下りの最終SSを全力で攻めた両選手であったが差は縮まらず、工藤・阿部組が逆転優勝を果たすこととなった。

 これにより 奥本・谷﨑組のシリーズチャンピオンが決定した。



CUP-1



 ヴィッツ限定クラスのCUP-1は2台が出走。前戦、四国てっぺんラリーで見事優勝を果たした桒村 ・古本組と、こちらも四国からの連戦となる山本・葛西組が参戦した。
 桒村は普段より荒れた路面やレインコンディション、そして下りのコースを好むと公言する。今回、それらの条件が揃ったことによりどのような走りを見せるのかにも注目が集まったが、その実力はSS1から発揮されることとなる。 傾斜のきつい上りが続くことからローパワーのヴィッツにとっては難しいコースになるかと思われたが、パワーを多くロスする路面状況とあって軽量FFマシンの利点が生きることとなり、CUP-2の吉原組に次ぐ2番手タイムを記録した。そして、前戦四国てっぺんにおいて桒村に食らいつく走りを見せた山本・葛西組も序盤からハイペースで攻め、CUP-2工藤らに次ぐ好タイムでSS1を終えた。続くSS2、まさに桒村が好む「雨・下り・荒れた展開」が揃ったSSとなったが、このSSでなんとCUP-2トップの吉原のタイムをさらに13秒も縮めるTRD Rally Cup by JBL全体でのトップタイムを記録することとなった。その桒村についていきたい山本・葛西組であったが、攻めすぎた結果か、SS2で路側の側溝にマシンを落としてしまい無念のリタイヤとなった。
 山本のリタイヤによりCUP-1一人旅となってしまった桒村・古本組であったが、桒村は四国でもTRD Rally Cup by JBL全体トップタイムでラリーを終えているだけに、今回もその結果に狙いを定めた攻めの走りを続ける。
 スリッパリーな路面が続く今回のコースでは幾度となく止まりきれない場面があったというが、その都度”故意に”マシンをスピンさせて減速したりコース脇の土砂壁に乗り上げてコーナリングするなど、巧者ならではの荒業を繰り出しながらプッシュを続け、終えてみれば今回もCUP-2勢を押しのけてのトップタイムで見事優勝を果たした。
 



 本戦においても、世界最大級オーディオメーカーで、家庭用オーディオ、ホームシアター、車載用などの民生機器から、世界中の映画館、スタジアム、レコーディングスタジオなどを対象とした業務用機器をラインナップするJBL(ハーマンインターナショナル株式会社、東京都台東区)からパートナーシップを受け、優勝クルーおよびU-25 AwardのクルーにはJBL製ヘッドフォンが賞品として贈呈された。
EVEREST ELITE 750NC / E65BTNC

 今年より本格的にシリーズ開始となったTRD Rally Cup by JBL。各地方の選手権関係者に力を借りながら無事終えることができた。個性豊かたな選手達が毎戦繰り広げるドラマにより最後まで展開が読めない白熱のシリーズとなったが、来年以降さらにイベントとしての熟度を上げ、ラリースト達のステップアップの土台となる中級者向けラリーイベントを盛り上げていきたい。

TRD Rally Cup by JBL 2019 シリーズポイントランキング

※イベントレポートという性質上、文中で敬称を略して表現している個所があります。